不顕性骨折(骨挫傷)
中年以降の女性によく見られるケースで、自転車に乗っていて転倒した時、あるいは歩行中つまづいて転倒した時、膝を地面に強打。
膝に腫れはあるものの、痛みが少なく何事もなく歩行はできる。
念の為、整形外科でレントゲン検査も受けるが「骨に異常は見当たりません打撲ですね。」と診断される。
通常の打撲であれば、2週間もすれば経過もよくなりそろそろ治るころですが、痛みが引かない、あるいは人によっては痛みもなく違和感があるだけの人もいる。
今回当院で見た患者様もこのタイプ。
打撲後の2週間は何事もなく毎日のようにテニスをしていた。
痛みと言うよりも、違和感があるので、当院が医療連携している病院でMRI等の精密検査を受けて頂いた。
すると…患者様からの連絡が入り「骨折が見つかりました」そこから、この患者様は松葉づえを使用し体重を免荷することになり、全治6週間。
昨日まで普通にテニスをしていたのになにが…
不顕性骨折(骨挫傷)というものです。
レントゲンでは映らない骨の中の骨折です。
写真のようにレントゲン上では異常が見られません。
今回のようにMRIを撮影しなければ気付かず、最悪のケースでは骨折部がつぶれ、変形することまで考えられた。

膝の前を強打した時の衝撃が膝の後方に達し、骨折部は膝の大腿骨の後外側でした。
MRIの画像では信号が見てとれます。
このタイプの骨折は非常に発見が難しく、処置が遅れてしまう事がほとんどです。

原因
このような骨折を起こす起因として骨粗しょう症が考えられます。
骨粗しょう症の予防には、カルシウムを多く取り、骨密度を高めることが大事だということは、よく知られています。
ところが最近、骨密度が高いのに骨折を起こす人が増えてきました。
その原因として、人によって「骨質(こつしつ)」に違いがあることが分かってきました。骨質とはズバリ「コラーゲン」です。
骨の構造を鉄筋コンクリートの建物に例えると、カルシウムはコンクリートに当たり、 コラーゲンは鉄筋に当たります。
建物は、コンクリートだけでは崩れてしまいます。鉄筋で強化することで、頑丈になります。
同じように、骨を強くするにはカルシウムで骨密度を増やすだけでなく、コラーゲンで骨質を高めることが重要なのです。
「骨密度+骨質=骨折しにくい体」ということになります。(美容でとっているコラーゲンとは少し違うので注意してください)

骨のコラーゲンが劣化する速度や程度には、かなり個人差があります。
なぜ差が生じるのか…その要因として最近の研究から、ホモシステインというアミノ酸と、ビタミンB6などが重要な働きをしていることがわかってきました。
骨コラーゲンの劣化や悪玉架橋との関連で、注目されているのがアミノ酸の一種のホモシステインです。
血液中にホモシステインが増えると、骨密度が高くても骨折しやすいことが分かってきました。
また、骨折しやすい人の体内には、ビタミンB6などが少ないという傾向もみられます
予防
ビタミン類を積極的に摂取することで予防する。骨粗しょう症の予防や改善のために、次の2点を心掛けましょう。
(1)カルシウムを十分に取って、骨密度を増やす。
(2)ビタミンB6、B12、葉酸(B9)をしっかり取って、骨質を高める。
このうちカルシウムは、体内への吸収率があまりよくない栄養素です。
食品の中では、牛乳が最も吸収率が高いのですが、苦手という人は小魚、海藻類を積極的に食べるようにしましょう。
またビタミンDと一緒に取ると吸収率が高まりますが、ビタミンDは取りすぎると副作用もあるので、サプリメントの場合は適量を守ることが大切です(食品から取る場合は多すぎることはほとんどありません)。
また、骨質を高めるには、ホモシステインを減らし、骨コラーゲンの悪玉架橋をつくらないようにすることが大切です。
ビタミンB6、B12、葉酸には、その効果があります。ビタミンB6は、レバーやマグロ(赤身)、ニンニク、ゴマなどに、B12はサンマ、レバー、しじみなどの貝類に、葉酸はノリや緑茶、枝豆、モロヘイヤなどに多く含まれています。
考察
皆様も、同じような状況で転倒し膝を強打した時、2週間たっても痛みや、違和感が引かない時、このタイプの骨折を疑った方がいいと思います。
当院では、我々から連携病院に患者様をご紹介する事で、患者様が普通に整形外科を受診するよりもスムーズでなおかつ細かいところまで精密に検査していただける体制を準備しております。
このようなシステムは地域でもあまり存在していませんので、どうぞ気軽にご利用ください。